先日の土曜日は、上咽頭炎研究会の大阪まで行ってきました。
かなり内輪の会なのですが、今回で第5回。
今年は参加者が多くてびっくりしました。
興味を持っていただいた先生が増えてきたということでしょうか?
今回も、自分の備忘録としてここにまとめとして、記録しておきますが、
誰かに多少でも参考になれば幸いです。
まずは講演1。
西宮で開業されている塩見先生のご講演。
『遷延性咳嗽・慢性咳嗽と上咽頭炎』
遷延性は3週間以上、慢性は8週間以上咳を言います。
これらの咳が、上咽頭炎と関連があるのではないかと考え、
塩化亜鉛療法を施行。
週に2回のペースで塩化亜鉛療法を行うと、
7日~10日程度で、かなり改善する。
副鼻腔炎を併発している場合は、もう少し長引く。
副鼻腔炎を併発している場合は抗生剤が必要だが、
そうでないものは、抗生剤がなくても塩化亜鉛療法だけでも症状は改善する。
それにしても、塩見先生の塩化亜鉛の上咽頭への塗布の仕方はすごいです。
次に千葉で開業されている杉田麟也先生のご講演。
『耳鼻咽喉科医なら知っておきたい上咽頭炎の診断と治療』
「上咽頭」と呼ばれる場所は、今まで(というか、今でも)
あまり注目されていない場所だが、
色々な症状が実は上咽頭の炎症から引き起こされている可能性が高い。
肩こり・頸の凝り、頑固な咳、所見に乏しい耳痛など。
鼻粘膜の肥厚のみられない(キリアン通気度計では正常)鼻閉感。
めまい感の中にも上咽頭炎が関与しているものがあるのではないかと。
また、頬部が痛くて急性副鼻腔炎が疑われるのに、
CTを撮影しても副鼻腔に異常がみられない場合があり、
これは上咽頭の上半分(三叉神経支配)の炎症で、
三叉神経第2枝の関連痛ではないかと。
さらに子どもの弛張熱の原因にも関与している場合があると。
その他、後鼻漏、IgA腎症の病巣感染源としても重要。
上咽頭炎を疑った場合、
1)上頸部の触診・・・ちょうど虫垂炎の筋性防御の様に痛がる
2)fiberscope・・・濾胞性変化。できればNBIで。
3)塩化亜鉛塗布・・・出血が見られれば上咽頭炎。
この杉田先生のすごいところは、
上咽頭の菌検査を自らされるところ。
まあ、僕もたまには菌の検査はしますが、
すべて外注に出していますので、
結果が帰ってくるのは菌種の報告でも3,4日、
抗生剤の感受性に至っては1週間ほどかかってしまいます。
そこを杉田先生は自分でギムザ染色をやって、
自分で確認されているそうです。
これはなかなかできないことです。
しかし、これをすることで、治療にあたって抗生剤が必要かどうか、
必要であればどの抗生剤がよいかを決める根拠となり、
より的確な治療が可能となります。