解剖学の次に学ぶのが組織学です。
解剖学が、身体の器官(臓器)ごとの名称と大まかな働きを学ぶのに対して、
組織学は顕微鏡レベルの身体の構造を学びます。
ここでの実習といえば、顕微鏡で見えたものをスケッチします。
例えば内耳のスライドを見ながら、書き写して、
これが有毛細胞であるとか、 内耳に来ている神経細胞だとか
それぞれをを指し示して書き込んでいきます。
上手に描けると”A”がもらえます。
惜しいと”a”が、以下”B””C”,で、”D”をもらうと書き直しです。
組織学の教授は、「見えたままに描きなさい」とおっしゃいます。
そこで、一生懸命見えるがままに書き写すのですが、
最初のうちはどうしてもBどまり。
自分では見えるがままに描いているつもりだったのですが、
どうしてもAがもらえません。
でも、しばらくしてわかりました。
ここで教授が要求していたのは、
写真の様に描くということではなくて、シンボライズして描くこと。
つまり、各器官の構成がどの様になっているのかということですので、
目的の細胞をいろいろな場所から見つけてきて、
教科書に載っているように描くことが必要だったのです。
覚えるのが目的なのですから、当然といえば当然のことでした。
そのことがわかってからは、描く時間も短くなり、Aももらえる様になりました。
もうひとつ組織学で印象的だったのが、赤色と青色の意味。
組織や細胞を見やすくするのに染色という技法があります。
この時染めるのに、一番一般的なのがHE染色という染め方なのですが、
このHE染色で血液を染めたものを前に先生が言われました。
「この赤く染まるのが好酸球で、青く染まるのが好塩基球です。」と。
ところが、どうみても好酸球はオレンジ色で、
好塩基球はやや紫がかった色に見えます。
まあ、洗脳で「白いものを黒と思わせる」というほどの違いではありませんが、
最初のうちはなぜこれが赤であり、青なのかわからず戸惑いました。
それでも、そんなことはすぐに慣れてしまうものなんですね。
そういえば、この組織学の教授にも英語をやかましく言われました。
日本語の教科書を読むのもいいが、できれば英語の教科書も読みなさいと。
ブルームホセットという洋書がオススメで、
僕も買ってところどころ読んでみました。
英語の苦手な自分でしたが、まずまずよくやったと今も思います。
おかげで英語での日常会話などはさっぱりですが、
英語の論文を読むのは比較的ましです(あくまで比較的ですけど)。
まあ、だからと言って今の自分が世界で活躍しているかといえば、
全くそんなぁことはないわけで、
昔の自分が今の僕を見たら、ちょっとガッカリしているかかもしれません。