Jastreboff博士へのインタビュー記事もこれが最後です。
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A.I.:TRT療法を行って良くなった患者さんに共通する特性は何かありますか?
博士:TRT療法の面白いところは、根本的な原因に基づいた耳鳴りを解決しようとするのではなく、聴覚システムと脳の他の部分の関係に働きかけるということです。このことは、多くのどんな耳鳴りの人々にも効果が得られることからも言えることであり、それなしには共通の特性や形質は何もありません。
A.I.:しかし、20%はうまくいかない人もいあますね。
博士:82%の患者さんが明らかに改善を示しており、最終的には90%近くの人に何らかの効果がみられます。残りの10%を検討して、TRT療法がうまくいくかどうかの予測ができるようになりました。
うまくいかないにはいくつかのグループがあります。
一つとして、社会的な注目を集める手段として耳鳴りを利用する患者のグループがあります。そういう人は被害者としての意識があり、その特別な位置に終止符を打ちたくないので、決して良くなろうとしません。
第2のグループはベンゾジアゼピン系向精神薬を大量に服用している患者さんです。ベンゾジアゼピンは脳の可塑性を減弱させるので、聴覚と脳の関係を変化させるのが非常に難しくなります。耳鳴りの患者さんの70%が睡眠障害を持っており、耳鼻咽喉科医が睡眠薬として処方しますので、私の患者さんの1/3はベンゾジアゼピン系薬剤を服用されています。彼らは1日に1~1.5mgのベンゾジアゼピンを服用されています。
私はTRT療法の第2段階で、この薬剤を中止するように説得します。しかし、ベンゾジアゼピンを1日2mg以上服用されている患者さんではTRTはうまく働きません。
(註:原文にはベンゾジアゼピンとしか書いていませんので、実際に商品名としてはわかりません。用量については薬によって異なるでしょうからあまり参考にしないでください)
第3のグループは財政的な問題で良くなりたくない人です。たとえば交通事故などで医療給付を受けられている様な方です。
A.I.:効果の兆しは最初の6ヶ月で感じることができますか?
博士:我々がこの治療法を開始した1990年代には、効果を感じる平均的な期間は1年でしたが、今では1ヶ月です。患者さんによっては3日で改善する人もいますし、逆に3ヶ月くらいかかる人もいます。再発を予防するために、9ヶ月は治療を継続することをおすすめしています。私が治療した2000人の患者さんのうち、再発した人はごくわずかです。そういう人は、交通事故であったり、乳がんになった人でした。
A.I.:耳鳴りに対処するのに、人工内耳やストレスコントロールといった他の技術はお考えになられないのでしょうか?
博士:ストレスコントロールはある程度有用です。耳鳴りという現象を減弱させるものではありませんが、耳鳴りに対して患者さんが反応をコントロールするのに役にたちます。人工内耳や内耳への電気刺激は40%の人で効果的ですが、5~7%の人で悪化が見られました。この結果を鑑みて、アメリカでは耳鳴りが重点的に苦痛な人の場合には人工内耳は禁忌となりました。
A.I.:多くの人生を変えた治療法の父としてどのように感じますか?
博士:それまで苦痛の人生だった人が普通の生活を送れるように導くことができ、今も私の教え子達が同じ方法でそれを引き継いでくれていると知って、とても幸せで満足しています。かつて、ある人から150$が送られてきたことがあります。私は知らなかったのですが、その人は私の教え子の患者さんでした。彼は、少額のお金を送りつけたことを詫びながらも、自分の人生が治療によって非常に助けられ、せめてものお礼がいいたいというものでした。
<TRT療法についての総括>
・耳鳴りで苦しむ患者さんの80%以上で、12ヶ月後に優位な改善がみられた
・この結果プラシーボでは説明できない
・決してネガティブなアドバイスはしない
・静寂の中に耳鳴り患者さんを置かない
・不快感を引き起こす様な音は用いない
・治療法が非常に異なるので聴覚過敏や音恐怖の診断を的確にできるようにしておくことは大切である
・TRT療法は、耳鳴り、音耐性(聴覚過敏、音恐怖)、難聴、tensor tympani syndromeにおいて一つの枠組み(フレームワーク)を提供するものである
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いかがでしたでしょうか?
何らかの参考になれば幸いです。