昨日の続きです。
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A.I.:それはすばらしい成功ですね。
博士:実際には私のこのモデルの科学的な結果が出るには8年かかりました。私はすでに患者さんの治療をずっと行ってきていますが、その後この治療モデルがポジトロンCT(PET)で確認されました。
耳鳴りの患者さんの脳では情緒や感情を司る脳の部分である大脳辺縁系が過剰に反応していることが示されました。このことは、多くの人の驚きでした。耳鳴りは内耳道になすべき事は何もなくて、むしろ脳のある部分の問題だというのですから。この事実は、私にとっては明白なことだったのですが、当時の私の同僚達の間ではそう考える人間は少数派でした。
A.I.:それで、耳鳴りは生じている場所が間違っているのではと?
博士:TRT以前は、効果的な唯一の治療はマスカー療法でした。これは他の音で耳鳴りを覆ってしまう方法です。この方法は耳鳴り患者さんの10%近くに効果的でした。実際にHassel博士はマスカーを用いて効果を調べました。しかし、すぐに多くの患者さんでもっと悪くなる人がいることがわかりました。15年この治療を行っても全く改善しない患者さんが30人近くありました。Hassel博士がこれらの人にTRTを使い始めると、ちょうど1年くらいでかなり改善しました。
A.I.:どのように効くのですか?
博士:我々は3日間で集中的に教えます。その中には、耳鳴りはネガティブなものではないのだという具体的なアドバイスも含まれます。また、ガイダンスでは患者さんのどんな疑問にもはっきりとお答えします。
そこでは、科学的な用語を用いずに、日常生活からの例を用いることが非常に重要です。
今、2mを超すような大きなコブラが部屋に居座っていると想像してください。もし、そのコブラは毒が抜かれており、安全だとわかったら私の方を集中して話を聞くことができますか?と患者さんに尋ねます。患者さんは、「とても無理です」と答えられます。人は危険があると分かっている部屋では、それに集中してしまいます。
そこで今度は、そのコブラがおもちゃで、全く危険のないものだったらどうですか?と尋ねます。それでも、皆さんはネガティブな感情を抱いてしまいます。
A.I.;同じようなことが耳鳴りでも言えると?
博士:まさにそうです。多くの患者さんは、耳鳴りに何かしらのネガティブな感情を抱いています。患者さんは多くの場合、それまでにたくさんの医師に診てもらっています。そこで言われたことは、「あなたの耳鳴りにできることは何もありません」とか単に「これからの残りの人生を耳鳴りと付き合っていくのを学ばなければなりません」あるいは、「耳鳴りを”治す”方法はありません」といった様なものです。
私は、「私の脳には欠陥がある」といい、完全にうちひしがれていた患者さんを知っています。彼は私のもとで約1年くらいで改善しました。
全世界を見渡しますと、耳鼻咽喉科医や他のヘルスケアの専門家、精神科医などもいつも同じように、「耳鳴りに対して何もすることができない。これからの人生、耳鳴りと付き合っていくすべを学んでください」と言います。これは、全く間違っています。
耳鳴りはネガティブなものではありません。あなたの脳に問題があるわけでもなければ、このまま耳が聞こえなくなってしまうというものではありません。
それは、ちょうどおもちゃのピストルを頭にあてている様なものだと。危険そうに見えるがそうではないと。
人はおもちゃのヘビだと分かっていても、もしそれが動けばびっくりしてしまいます。それは無意識の脳が最初に反応するからです。人はまず逃走する本能が働き、その後に考えがついていきます。
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(補足)
確かに耳鳴りがのために、
頭がおかしくなるとか、命に関わるというようなことは、
ほとんどありません。
ただし、まれに聴神経の腫瘍があったりとか、
全身的に血液の粘度が上がっていて微少な血管がつまりやすくなっているとか
貧血があったり、耳管狭窄症が原因であったりという場合もあります。
この記事だけで判断するのではなく、
一度はきちんと診てもらう様にしてください。
以下は来週に