『驕れる白人と闘うための日本近代史』
松原文子著、田中 敏訳、文春文庫
この本は日本人が描いたものですが、
原著はドイツ語で書かれています。
それは、ドイツに在住していた著者が
欧米人と話をする際に、
日本や、日本人、あるいは東洋に対して
あまりに誤った認識を持っている人が多いことから、
これに反駁するために書かれたものでした。
誤った認識とは、
西欧人は優秀で、産業革命や、民主主義なども
西欧人が東洋に教えてあげたというような考え方である。
日本人もその一国で、
もともと野蛮な国であったのを西欧人が啓蒙したのだと。
こうした考え方は、日本人の中にも根強く残っています。
250年もの間鎖国をしていて遅れた文明だったのを
西欧人が啓蒙したのだと。
しかし、筆者は開国前の日本は、
文化的にも西洋に引けを取らないものであったし、
産業革命なども特別引き起こす必要がなかったのだと考えます。
あるいは、日本は開国後奇跡のような文明開化・発展を
きたしたと思われていますが、それは奇跡でも何でもなく、
工業化以外は日本のレベルは外国にひけをとっていなかったので
工業を吸収すればすぐに追いつくのは当たり前のことだたのだと。
僕も欧米人の知り合いは何人かいますし、
その人達はみんないい人です。
ただ、国家レベルや大きな社会レベルでは、
白人が自分たちに有利に物事を進めて、
最終的には欲しいものは何でも手に入れるという習性は
今でも残っていると覚えておくことは大切かもしません。
たとえば、スポーツの世界でも、
日本人は与えられたルールの中で工夫をして技術を高めていきますが、
(もちろん個人レベルでは白人でも同じですが)
西欧人は中々勝てないとルールの方を変えようとします。
柔道しかり、ノルディック複合しかり。
西欧人の貪欲さや他を支配しようという習性は、
もともとは土地が痩せていて生産に向かない土地柄や
一神教の文化などが影響を与えていると筆者は考えます。
この習性は今でも受け継がれています。
TPPもその一つでしょう。
ルールを変えることで、何がなんでも欲しい物は得る。
それは、インドの綿織物やお茶、中国の陶器などでもそうで、
百年、二百年の時間がかかっても目的を達成するのだそうです。
この本は、現代日本人が読んでおくべき本の一冊と思います。