塩化亜鉛療法(上咽頭擦過療法)

ここ3年くらいになりますでしょうか。
知り合いの先生に教えていただいて、施行しています。

鼻の一番奥での咽喉とつながる部分は鼻咽頭(上咽頭)といい、
アデノイドと呼ばれる扁桃と類似のリンパの組織があります。
ここは、鼻から吸い込んだ空気が咽頭に流入される際に、
曲がり角に位置するため、
空気中の微粒子、中でも細菌やウイルスといった病原体が
振り落とされる場所で、
人間はここで異物・微生物の侵入をくいとめています。

そのため、ここは炎症反応の起こしやすい場所で、
風邪の初期などはここから痛くなる場合が多いと思われます。

ですので、風邪の引き始めにはこの部分に薬を塗ると、
ヒリヒリとして痛いですが、早く治ります。

また、慢性的に炎症を起こす場合があり、
頑固な後鼻漏の原因になっている場合があります。

1960年代、P-Spot塩化亜鉛をここに塗布すると
症状が改善することを、
東京医科歯科大学教授の堀口申作先生が
提唱されました。

『BーSpotの発見』
光文社カッパブックス(絶版)

(B-Spotの「B」は「鼻咽頭の頭文字のB)
ただ、堀口先生は、この治療法で、
あまりにも色々な病気に効くと、
言われたものですから、他の医師から懐疑心を持たれて、
あまり普及しなかった様です。

それを最近、関西で開業されている耳鼻咽喉科の先生方が、
積極的に追試をされ、
これは少なくともいくつかの疾患には有効だろうということになり、
僕も教えていただきました。

塩化亜鉛はトローチなどにも含まれる成分で、
殺菌・収斂作用があり、
少なくとも急性の上咽頭の炎症に有効と思われます。
また、CTにて副鼻腔炎が認められないような
後鼻漏の方の中には、
この治療法が有効な方が多いのではないかと思われます。
(ただ,後鼻漏は中々一筋縄ではいかないことも確かです。)

塩化亜鉛を上咽頭(アデノイド)に塗布しますと、
結構な疼痛がみられます。
同部にわずかにですが出血が見られることもあります。
こうした場合、上咽頭の炎症が強いと思われ、
何回か薬を塗っていくと、痛みや出血が収まってきて、
不快な症状も改善してくることが多い様です。

また、IgA腎症という病気があり、
扁桃の慢性炎症と関連があると言われており、
治療として扁桃摘出術を行う場合があります。
ところが、この手術をしても
中々腎臓の所見が改善しない場合があるのですが、
それが塩化亜鉛療法で改善する場合があるそうです。

追記(2018.4)
表題や文中に『塩化亜鉛療法』とありますが、
当院の診療案内やブログ中に出てくる『B-Spot療法』と同じものです。
これらは、その後治療法名が
上咽頭擦過療法(Epipharyngeal Abrasive Therapy ; EAT)
に統一されました。