一般的な総合感冒薬は、風邪そのものを治すものではなく、
風邪に伴う諸症状を緩和するものです。
これに対して、漢方薬はどうでしょうか?
漢方薬の場合、おそらく自律神経系や免疫系に働きかけて、
ウイルスや細菌を排除したり、炎症を鎮めてくれるのだと思いますが、
詳しいところはまだよくわかっていないことも多いと思われます。
「漢方というのは、非科学的ではなく、未科学的なんだ」
というのは、僕が大学時代に漢方を教えていただいた永田先生の言葉。
わかっていないことも多々ありますが、
”こういう時は、この漢方を使う”
という口訣のようなものが漢方にはあります。
まあ、口訣だけでは、民間薬の域を超えられませんので、
そこは、きちんとした体系化された学問がありまして、
「こういう症状があるから、こういう病態と考える。
さすれば、生薬として○○が含まれるものがよく、
結果として、この薬が選択される。」
こういう考え方が、随証治療であり、
辨証(べんしょう)と呼ばれる思考です。
ま、それはさておき、
僕がよく処方する風邪で用いる漢方についてお話しましょう。
------
<桂枝湯(けいしとう)>
この処方自体は、あまりすることがありません。
ただ、この処方はその他の色々な処方の基本となります。
一応、イメージとしては、
「身体の虚弱な感じの人の風邪の引き始め」
「汗をじんわりかいている」「軽い寒気がある」
です。
ただ、以前、自分の経験ですが、
風邪を引いた時に葛根湯(後述)を飲んだところ、
汗が止まらないようになったことがありました。
昔、似たような場合に
桂枝湯が効いたというのをどこかで読んだことがあり、
自分も試してみたところ、ぴたっと止まりました。
ですので、
”風邪をひいて鎮痛剤等をのんだところ汗が止まらなくなった”
という場合にも用いることができると思います。
<葛根湯(かっこんとう)>
漢方薬の中でも最も有名なものの一つですね。
イメージとしては、
「肉体労働者の風邪の引き始め」
「汗がなく寒気がして、首から肩にかけて凝っている状態」です。
ですので、
風邪を引いて1週間もずーーーと飲んでいるけど効かない
という人がいますが、これは間違っています。
ま、効いていると思われれば構いませんが。
葛根湯の構成生薬は、
桂皮、芍薬、甘草、大棗、生姜、葛根、麻黄。
対して、桂枝湯の構成生薬は、
桂枝、芍薬、甘草、大棗、生姜。
葛根・麻黄が加わるだけで、方向性がガラッと変わってきます。
ここが漢方の面白い所です。
葛根湯には、他に、
「ウイルス感染の初期」「感染性胃腸炎にも使用」
というイメージがあります。
ですので、
「おたふくかぜ」や「胃腸かぜ」にも効果的な場合があります。
長くなってきたので、今日はここまで。